第45話:因縁のレアドロップ、そして野獣の森へ
 二人の完璧な連撃が、ついに騎士団長の強固な装甲を打ち破り、その急所へと深く突き刺さる。  ガガァンッ! と激しい火花が散り、圧倒的な威容を誇っていた騎士団長の膝が、ついに崩れ落ちた。  「今よ、ミリッ!!」  メーヴェの鋭い叫び声と同時に、自分たちは残されたありったけの力を振り絞り、怒涛の猛攻を浴びせかけた。  もはや息を吸う時間すら惜しかった。この一瞬のチャンスを逃せば、次はない。  死闘はすでに数時間に及んでいた。肉体も精神もとうに限界を迎えている。ここで決め切れなければ、確実にこちらが先に力尽きる。極限の緊張感が、脳と筋肉に凄まじい過負荷を強いていた。息つく暇もなく、ただ無心に連撃を浴びせる。  ――そして、ついに騎士団長の身体から、どす黒い闇の瘴気が勢いよく弾け飛んだ。  大男の身体が、サラサラと崩れていく。  勝ったのだ。  溢れ出した闇は柔らかな光へと変わり、空へと消えていった。  しかし、その光が消え去った中心に、ぽつんと「一つ」だけ、異質な存在感を放つ大盾が残されていた。  「……嘘、レアドロップ!?」  メーヴェが、驚きで目を丸くして叫んだ。  「どうするのミリ、すごいわよ! 初踏破だけじゃなく、こんなレアドロップまで引き当てるなんて! あーどうしよ、売る? 使う? 選択肢は二つよ!」  メーヴェには、まだ治療費の負債がある。だから、この一品ものの盾を売って返済に充てたほうが良いのかもしれない。  しかし、自分はこの世に二つとない大盾の魅力に、強く心を惹きつけられていた。  「メーヴェ、どうすればいい? これを売れば負債は帳消しになるか?」  自分の言葉に、メーヴェは忘れていたとばかりに目を丸くし、少し考え込んだ。  「ううん、この盾はミリが使いなさいよ。呪われたライオハルツの盾…。その方が面白いじゃない。でも、いい? レアドロップはそのままだとロクに使えない。他の素材で補強し『強化』して初めて、真価を発揮するのよ。でも、こんな地方都市でやるのは勿ったいないわ。鍛冶屋にろくな素材もないしね」  メーヴェは一瞬だけ悩む素振りを見せ、すぐに決然と言い放った。  「行きましょう、首都に。――あの『野獣の森』を越えてね」  その言葉を聞いた瞬間、自分の心臓が冷たく跳ねた。  野獣の森。  そこは、かつて「ナノ」だった自分が、押し寄せる都会への恐怖に耐えきれず、無様に背を向けて逃げ出した場所。そして、あの日の逃亡こそが、ダラーとの別れを決定づけた最大の理由となった因縁の地だ。  (これも運命……いや、呪いか)  逃げ続けても、結局はあの場所に引き戻される。  だが、今の自分は泥を這いずり、メーヴェと共に強敵をも退けた「ミリ」だ。  「……わかった」  自分自身にそう強く言い聞かせ、深く頷いた。