第57話:食卓の作戦会議と、最初の標的
新居で迎える初めての朝。ホールに漂う香ばしい匂いに誘われて起きると、ユーが手際よく朝食を作ってくれていた。
四人で古ぼけた食卓を囲む。出されたカリカリのトーストと温かいスープは、野営の乾パンとは比べ物にならないほど美味しかった。
「ツツジ、ギルド発足の目標って何かあるの?」
お気に入りのカフェオレを飲みながら、メーヴェがふとツツジを指差した。
言い出しっぺであるツツジは、突然話を振られて目を丸くする。
「えっ? いや、特には何も……ただ、この四人の絆が確かなものとして欲しいと思って、その……」
大柄な身体を小さくしてしどろもどろになるツツジを見て、メーヴェは小さくため息をつきながら笑った。
「そ。別に責めてないわ。じゃあ、当面の目標は『ダンジョン攻略』にしましょう。ドロップアイテムを集めて売るだけでも、しっかりとした資産形成はできるしね」
「レアドロップ狙いと、オークションですかー?」
ユーがスープをすすりながら質問する。
「レアドロは正解。でも、オークションはよほどの品が出ない限り使わないわ。手数料もバカにならないしね。基本は、首都の『マーケット』を利用するのよ」
「マーケットってなんだ?」
ツツジがトーストを豪快に頬張りながら首を傾げた。
「取引場のようなものよ。冒険者や商人が集まって、需要と供給のバランスでアイテムの価格を変動させるの。ま、その時になれば嫌でもわかるわ。……ちなみに、その売り買いの担当はギルドマスターになると思うけどね」
そう言って、メーヴェはいたずらっぽく自分を指さした。
交渉事や相場の見極めなどやったことはないが、ギルドマスターとして指名された以上、断る理由はない。
「わかった」
自分が短く返事をすると、メーヴェは満足そうに頷いた。
「じゃあ、準備ができたら向かいましょうか。まずは『エトレイン地下水路』よ。首都の反対側にあるから、ここから乗合馬車を使って1時間程度で着くわ」
こうして、エターナルカルテットの最初の標的が決まった。
これからこの四人で、首都周辺に点在する数多のダンジョンをすべて踏破していくのだ。
未知のトラップ、見たこともない魔物、そして複雑な迷宮の構造。
(まずは出立の前に、新しいスケッチブックを買っておかなきゃな)
自分は残りのトーストをかじりながら、これから描くことになるであろう膨大な地図の束に思いを馳せ、静かに闘志を燃やしていた。