第49話:焚き火の告白、奇妙な関係
「ミリ、盾の調子はどう?」
夜、パチパチと爆ぜる焚き火の脇でマップを描いていると、メーヴェが二人分のカフェオレを手にやってきた。
「ん」と短い声とともにカップを差し出す彼女に、「ありがとう」と返事をして受け取る。メーヴェはそのまま、自分のすぐ隣にごく自然な動作で腰を下ろした。
「以前の盾よりもずっと安定感がある。実戦でも全く問題はないな。……ネズミ狩りで買ったあの盾よりも、遙かに使いやすい」
「ふふ、あのネズミ狩りは本当に大変だったわね」
当時の泥臭い依頼を思い出したのか、メーヴェがくすくすと楽しそうに笑う。
「未強化の段階でそれだけ強固なら、首都でちゃんと強化したら、さらにとんでもない性能になるわよ」
メーヴェが、自分の傍らに立てかけられたライオハルツの大盾にそっと指先で触れた。
「……中に入っても呪われるなんてこともなかったし、ただの噂だったわね」
そう言う彼女の横顔が、火に照らされて少しだけ寂しそうに見えた。呪いすら楽しみにする彼女にとっては、拍子抜けだったのかもしれない。
(――いや、そうでもないな)
自分は心の中で静かに呟いた。
槍使いだった自分が前衛のタンクになったことも、そしてこの禍々しいレアドロップによって、これからもタンクを続けようとしていることも。すべてに何か、深い因縁めいたものを感じずにはいられないのだ。
『あなたはタンクになりなさい』
いつか、誰かに言われたその言葉。それは今でも自分の耳の奥に優しく残り続け、同時に、自分の人生をこの場所に縛り付ける、心地よい「呪い」のようにも思えた。
「へえ、あんたマップも書けるのか?」
焚き火に護符を放り込んで結界を維持していたツツジが、いつの間にか背後から自分の手元を覗き込んでいた。
「わあ、すごーい、うふふ」
ユーもツツジの脇からひょっこりと顔を出し、精巧に描かれていく地図を見て目を輝かせる。
「なあミリさん、あんたさっき道中でトラップの解除もサクッとやってただろ? シーフでもないのに、随分と器用じゃねえか」
ツツジは不思議そうに首を傾げながら、自分とメーヴェの顔を交互に見比べた。
「……なあ、聞いていいのか分からねえんだが、あんたらって一体どんな関係なんだ? 普通のパーティーとも、なんか空気が違うっていうか」
ツツジの素朴な疑問に、自分はメーヴェと小さく顔を見合わせた。
自分が口を開くより早く、メーヴェがふっと不敵な、いつもの余裕に満ちた笑みを浮かべる。
「そうね……強いて言うなら、最高に相性のいい『借金取り』と『負債王』よ」
あっけらかんと言い放った彼女の言葉に、ツツジとユーは呆気にとられたようにパチクリと目を丸くしていた。
「あんた借金してんのか!?」
夜の森の静寂の中、温かいカフェオレの湯気の向こうで、自分たちの旅の道路が静かに、そして確かに繋がっていくのを感じていた。