第85話:最高峰の夢と、分かつ道
勝手に看板を下ろし、ギルドを去る決断をした自分に対し、厳しい叱責を受ける覚悟はできていた。
だが、結果はまったく逆のものだった。
「今まで全てを任せてしまって、本当に申し訳なかった」
ツツジとユーは深く頭を下げた。そして、旅に出るという自分を、ただ悲しげな、痛切な瞳で見つめていた。
引き留める言葉がなかったのは、もう自分が戻れないことを彼らもわかっているからだろう。すでに見ている視点が違う。最早、結成当時のように純粋に肩を並べて歩むことは難しいのだと、皆が静かに理解していた。
「一時でも、ともに首都最高峰に近づけた。あの夢を見せてくれて、本当にありがとう。田舎の弟たちに自慢するよ」
ツツジの言葉を皮切りに、ぽつぽつとこれまでの思い出話に花が咲いた。
やがてユーが、涙ぐんだ震える声で「ここまで連れてきてくれて……ありがとう」と呟いた。
その言葉を聞いて、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
果たして、自分は彼らを導いてこれたのだろうか。いや、違う。自分が導いたのではない。皆の存在に、自分が導かれてここまで来られたにすぎない。
自分はただ、本当に人に恵まれたのだ。
静寂が降りた待合室に、ヤガミがやってきた。
「メーヴェが目を覚ましました」
短いその言伝に、ツツジとユーは小さく、しかし確かな意思を持って静かに頷き、自分を送り出すように視線を向けた。
サーカス跡地での出会いから始まり、ライオハルツの死線を共に超え、ここまでやってきた。
これが、最高の相棒との最後の時間になる。
どう切り出せばいいのか、胃が鉛のように重い。
ただ、それ以上に――今はただ、早く彼女に会いたかった。